CMP 30HXはいくらまでなら原価回収できるか?
GPUマイニングにおいて、最近はCMPシリーズが出てきているので、CMP 30HXが原価回収できそうかどうかについて考える。
まず、CMP30HXの基本性能から見ていこう。
これら上記2つのリンクをたどってみればわかるが、CMP 30HXとGTX 1660 Superはほとんど同じ製品であることがわかる。たどるのが面倒な人のためにこちらに画像を載せているので参考にされたい。
これらを見比べると、CUDAコア数やクロック数、ビデオメモリとその種類、メモリ速度、メモリインターフェース幅が全く同一であることが分かり、ほぼ確実に、「同じ製品の型番違い」とみて良いだろう。
違いがあるとすれば、CMPシリーズは映像出力がないことで、これは、マイニングにおいては映像出力は必要ない。
映像出力のある通常のGTX 1660 Superを使う場合、偽の画面出力を付けたりしてあえて映像出力させないと上手く動かないことがあったりする。
GTX 1660 Superにマイニング制限がかけられたロットの話は聞いたことがないので、おそらくGTX 1660 Superでもほとんど同じ性能になると考えてよいだろう。
なので、マイニング的なパフォーマンスはほとんど同じと考えてよい。
次に、GTX 1660 Superと、CMP 30HXの価格について検討してみよう。
代理店やメーカーから直接買った場合はもうちょっと安いかもしれないが、消費者の手に入る価格しか出てこないので、その価格で検討する。
2021年5月11日現在、価格.comでGTX 1660 Superの価格を確認すると、以下のようである。
大体6万円~6万5千円前後である。
次に、CMP 30HXの価格について確認していきたいのだが、日本では取り扱いがないので、海外のニュースなどから価格を推定する。
上記3つのページを確認すると、大体8万円~9万円ということが分かった。
CMP 30HXはGTX 1660 Superより少し高いということがこれよりわかったと思う。
次に、原価回収ができるかどうか考える。
・・・ためにまず利益を計算する。
細かい計算なので下記は少し読み飛ばしてよい:
Ethereumにおいては、難易度というのは、その回数分だけハッシュを生成すれば新しいブロックが作れるだろうという数字である。(BTCやBTC系コインにおいての難易度は、Ethereumとは計算方法が違うし、収益性計算方法も違う。また、当然、違うハッシュアルゴリズムのコイン同士で難易度を比較することは意味がないので注意しよう。)
実際のEthereumでの1秒あたりの収益性は、ハッシュレートはH/s、ブロック報酬はEthereumのブロック報酬、価格はEthereumの価格、難易度はEthereumの難易度であるとして、
(ハッシュレート) x (ブロック報酬) x (価格) / (難易度) [ 円/秒 ]
である。
ただ、実際のところは、ハッシュレートはMH/sで表記されているので、MH/sに直し、難易度もTH単位なのでTH単位に直し、1秒当たりの収益性を考えることは通常ないので、秒から日に直すには60 x 60 x 24を掛ける必要があるので、1日当たりの収益性を考えると、
(MH/sハッシュレート) x 10^6 x (ブロック報酬) x (価格) x 60 x 60 x 24 / (TH難易度) x 10^12 [ 円/日 ]
となる。
また、ここから電気代を引いたり、保守費用がある場合、
{ ( 1- (保守費用等) ) x (MH/sハッシュレート) x 10^6 x (ブロック報酬) x (価格) x 60 x 60 x 24 / (TH難易度) x 10^12 } - (電気代) [ 円/日 ]
となる。
また、電気代はkWh単位での契約ならば、GPU1枚当たりのみの消費電力は1日、
0.1 x 24 = 2.4kWh・・・となるように見えるが、実際のところ、CPUやメモリやHDD(SSD?)の消費電力や、また、電源ユニットの変換効率の問題があるので、実際にはもう少し多いかもしれない。
要するに:
要するに、CMP 30 HXはハッシュレート27MH/sとし、消費電力は定格で125Wだが、実際のところ100W前後で動かせるとのことなので100Wとする・・・が、"おぼろげながら浮かんできたので"1日当たりの電気代支出は28円としておく。Ethereumブロック報酬は3ETHとしておき、1ETH価格は42万円ちょうどとする。これまた"くっきりとした姿が見えているわけではないけど"保守費用率が25%とられた場合を考えると、5月10日時点では、
0.75倍 x 27MH/s x 10^6 x 3ETH x 420000円 x 60秒 x 60分 x 24時間 / 7631TH x 10^12 - 28円 なので・・・1日の利益は261円となる。
仮にブロック報酬が3.5ETHの場合は1日の利益は309円になる。
仮にブロック報酬が4ETHの場合は1日の利益は357円になる。
試しに、収益性計算サイトのWhattomineで計算してみた結果、大体似たような結果になった。ここでは難易度もブロック報酬も7日平均で出している。
Profitが大体$3になり、私がした利益の計算に近いような結果になっていることがわかると思う。
ブロック報酬は3ETH~4ETHの間だろうし、1日300円前後の利益が出るとして、原価9万なら300日で回収できて、原価25万なら833日(27か月)で回収できるな!よし!・・・・
なわけない。
これは瞬間値である。価格は無視するしかないとはいえ、今後難易度が上がらない保証があるのか?今後EIP-1599が来るが、その影響を無視した計算をしていいのか?だめだろう。
長期的な収益を考える。
Ethereumのマイニングが終了することは考慮に入れないが、EIP-1599の影響があるものとして、ブロック報酬は途中から2.5ETHになること、および難易度が採掘中に上昇していくことを考える。価格は変動しないものとする。
難易度は、Ehtereumのブロックエクスプローラーから取得可能である。
https://etherscan.io/chart/difficulty
気になる方はCSVデータをダウンロードして確認してほしい。
2021年5月1日~2021年5月10日の難易度のグラフは以下のようになる。
また、毎月の初日のデータのみを取ると以下になる。
これより、大体月に1.10倍で増えていくことがわかる。最近は特に難易度上昇が大きいが、価格上昇も大きいのが原因であると考えられる。
さて、それでは真の収益性を確認しよう。
データは、ハッシュレートは27MH/s、1ETH価格は42万円として計算している。その他の数値は表に入っている。また、簡易にするため、1か月30日として計算している。
1か月で難易度が1.1倍になる場合は以下のようになる:
実際にはその月中難易度がずっと変わらないということはないが、徐々に上がったとしても、近い数字になると考えている。しかし、実際はここまで難易度が上がる場合は、価格もまた一気に上がり続けてる場合が多いので・・・、あまりこの難易度上昇比率はアテにならないかもしれない。
1か月で難易度が1.05倍になる場合は以下のようになる:
価格変動なしの場合はもうちょっと難易度上昇スピードは遅いかもしれないが、一応これを基準にしておけば、損することはなさそうなシナリオである。
これなら一応1枚9万で買っても2割くらい増えて終わる計算である。
1枚20万円は・・・無理かも・・・・
尚、RTX 3080やCMP 90HXの場合は原価35万近くまでならこのシナリオでもなんとか回収は可能である。単純にハッシュレートが3倍くらいなので・・・ただ、現況だと一応1枚30万円以下くらいなら買いくらいで考えておいた方が良いだろう。
もう少し楽観的なシナリオとして、1か月で難易度が1.02倍に増える場合も想定してみると:
3年前後で18万円になる。楽観的なシナリオなので、これより良くなることはあまり望めない。
・・・・やはり1枚18万を超える場合は回収できないのでは・・・?
では少しマージンを取って16万で買ったら大丈夫か?実はそういうわけでもない。
・・・・本当に3年以上動かせるのか?
実は、大事な観点をわざと忘れて計算している。
EthereumのPoWが終わらなくともマイニングを終了せざるを得なくなるイベントが1つある、それはDAGサイズの上昇である。
Ethereumでは、ASIC耐性のためでもあるが、わざとマイニングに必要なVRAM量が増えるようにアルゴリズムが設計されている。VRAM4GBのGPUでは、Windowsなら2019年の10月あたりから、Linux系OSを使っている場合でも去年にはEthereumが掘れなくなっているはずだ。(Zombie modeといって、少しVRAMが足りなくても無理やり掘る方法もあったが・・・それでも今はだいぶ厳しくなってしまっているはずだ)
DAGサイズの上昇スケジュールに関しては以下を参照すると良い:
が、例によって、面倒な人のためにここにもスクショを貼ってある。
これによると、Ethereumの現在のDAGサイズは4.227GB、VRAMが5GB以上なら掘れる計算である。とはいえ、Windowsだと、システムにVRAMを取られるので掘れなくなっている可能性はある。さて、本題の6GBの場合を見ると、2024年1月には採掘不能になるようである。
・・・あれ?
・・・ただ、Ethereum以外にもコインはあり、それらのコインを掘った場合に利益が出る場合もある。
一応は、この相場状況では、OctopusというアルゴリズムのConfluxというコインを掘った場合などは、1日200円~300円の収入を生むことはできる。ただし、Ethereumだけ掘り続けるというのは無理だろう。
自分で運用すればいいのか?
自分で運用した場合、日本の家庭用電力では大体1kWhにつき25円かかる。倍くらいの電気代になるので、今は良いが、価格が下がったらどうにもならなくなる。
また、置く場所の問題もあるし、今は良いが儲からなくなった時にどうしようということを考えていないと終わってしまう。
また、冷却を考えないとGPUは"早死に"する。常に70℃以下の温度を保つようにしたいが、果たして今あなたがいる建物はそこまでの冷却ができているか?クーラーだけでなんとかしようとしてないか?クーラーも冷却には限界がある。夏に酷使させてないか?結局保守費用というのは、土地代や場所代やメンテナンス代だけでなく、空調・冷却代なども含んでいるので、長い目で見れば、故障率などを考えれば、どっちがいいのかはわからない。良い環境でのマイニングができることを考えると、保守費用を払ってでも別の場所でマイニングしたほうが良い場合も多々あると考えている。
その点に関して、保守費用率が25%の業者があったとしても、それが必ずしも取りすぎとは言えないと考えている・・・・もちろんそこの冷却がしっかりしていれば、だが。
結局CMPシリーズは"買い"なのか?
CMPシリーズは画面出力がないと最初に説明したが、これは中古販売の際に不利になる要因である。これを考慮すると、安く売ってくれる業者ならともかく、20万以上出して買うようなものではない。
一応、マザーボードやCPUやメモリやフレーム、ファンなどの費用や、もしくは購入の手数料などを考えると、2~3割の手数料があるくらいはわかる。ただ、1000枚以上の大口などで購入している場合はそもそも安く仕入れているだろうから、CMP 30HXのマイニングを誰かに委託するような形式で買うならば、手数料を考慮してもせいぜい1枚12~13万円くらいまでにしてほしいところである。
いや自分だったら10万以下じゃないと買いたくないけど・・・・